看護士さんが誰に対しても優しいとわかっているけれど、 今、わたしに向けている笑顔はわたしだけのものだから。 胸の奥がじんと痺れて、目から熱いものが流れ落ちる。 「汐里(しおり)ちゃん?」 看護士さんが驚いた声でわたしの名前を呼ぶ。 さすがだな、下の名前も知ってるんだな、と妙に冷静に思う。 「どうしたの?痛い?」 わたしは首を横に振る。 自分でもどうしてだかわからなかった。 どうして泣いているのか。