「今はまだ夜中だから、ゆっくり眠って」





その人はわたしの手を握ったまま、優しい声で言う。





「明日先生から説明あるから」






そう言いながら、空いているほうの手で、私の前髪をそっと撫でた。





その手があんまり優しかったので泣きだしたくなった。






眠くて意識が朦朧としながらも、その少しひんやりしたてのひらが心地よくて。





「眠いでしょ?無理しなくていいから眠って」





看護士さんが笑いながら言う。







もう少し、この笑顔を見ていたい。





この声を聞いていたい、そう思った。






初めて会った人なのに、何故だかそう思った。