『本日は忙しい中、足を運んで頂き…』



課長の兄貴がマイクを持つ


「わたし、あいつ嫌いです」


「兄貴のことか?」


だるそうに肘をつく課長


「…三上さんをとった」


「ぷっ」


「何笑ってるんですか

三上さんは私達より

あんなへんな男の方がいいんです」


幸せそうに微笑む三上さんを見る

イカ焼き食ってた時と大違いだ


「ヤキモチか?」


「ちがいます」


面白そうに私の顔を覗く課長

本当、イヤな人だ


「そうふてくされるな。

どっちとかはないだろう。」


「…だって会社やめたじゃないですか」


「今まで会社で俺等と楽しんだ。

次は新しい家庭で楽しませてやらねーと。

それに、俺の兄貴は

絶対に三上を幸せにする。

そんな男だ。俺が保証する。」


そんなの…


「……。」


「寂しいか?」


「寂しくないです

三上さんと約束したんです

三上さんがいないなら

今度は私がイカ焼きを配る番なんだって」


あの時の

もう戻ってこない光景を思い出す


「ふっ……そうか。」


肘をついて前を見る課長


「だから…

ぜんぜんさみしくなんかないです…」


「あぁ、わかってるよ。

俺もついてる。」


ぽんぽん…


「か、ちょぉ…」


課長の手は優しくて暖かかった

だから余計に涙が出てしまった