「ご馳走様でした」
夕ご飯を食べ終わった僕は、箸を置いて手を合わせました。
隣で彼女が、不思議そうな顔をします。
「桐生くんって本当に行儀良いよねぇ。
お父さんやお母さんの教育が良いんだねぇ」
「…………」
僕は無視しました。
先ほど、次郎さんにバレたばかりです。
僕が次期総理大臣と謳われる政治家・桐生星太郎の息子だと。
…彼女にバレるわけにはいきません。
「桐生くん、泊まってく?」
「いえ、それはさすがに遠慮します」
「そう?
あたしの部屋でラブラブしたかったけどなぁ」
「それは一生遠慮します」
「じゃあ桐生くん、お家まで送るよ」
「結構です。
帰り道、キミ1人で夜道を歩かせるわけにはいきませんから」
「えー?
でももっと、桐生くんといたいなぁ」
ぶーっ、と唇を尖らせる彼女。
家まで送るなんて…それは普通、男が言う台詞ですよ?