屋上の扉を静かに閉め、
僕は寄りかかって溜息をつきました。
…これで、良いのですよ。
これで僕は心置きなく、この世に別れを告げることが出来る。
本当はずっと、気がかりだった。
僕がいなくなった後の、彼女が。
新しい男を見つけ、その相手に向かって猛アピールをする彼女。
想像するだけで、僕が僕でなくなっていく。
いつしか彼女は僕にとって、大事な人になっていたみたいです。
だけど、僕じゃ駄目です。
素直になれない僕じゃ駄目です。
彼女を愛せない僕じゃ駄目です。
馬鹿なほど真っ直ぐな彼女には、真っ直ぐな人がお似合いです。
「…って、逃げているだけじゃないですか、僕」
クシャッと右手で前髪をかき上げます。
グシャグシャになろうが、関係ありません。
逃げているだけだってわかってます。
わかっているんです。
…だけど、僕じゃ駄目です……。