ふとあの日を思い出して

桐生くんを見上げると。

彼がピタンと立ち止まった。




「どうしたの?」


「…帰りますか」


「へっ?」





止まって空を眺めれば、空は夕焼け色に染まっている。

スマホを取り出して時間を見ると、午後6時。

…学校を出たのが2時頃。

随分歩いていたんだな…あたしたち。





「…では僕はこれで。
失礼します」


「き、桐生くん?」


「……何ですか?」


「い、一体桐生くんは…何がしたかったの?」




約4時間も炎天下の中歩きまわって。

しかも同じところをずっとグルグル歩いていた。

…用事があったんじゃないの?





「……暇つぶし、ですよ。
ですから言ったでしょう?

早く帰りなさい、と」





桐生くんはそう言うと

さっきまで歩いていた道とは違う道へ向かって行く。

あっち行けば桐生くんの家。

真面目に家に帰るつもりなんだ…。






「バイバイ桐生くん!
明日学校でね!!」





桐生くんが振り向いて、

溜息をついて歩き始めたのは気のせい。

あたしは自分の家に向かって歩きだした。