桐生くんはそのまま無言で歩き始める。
ブレーキがなく、
アクセルしかない車みたいに。
どんどんどんどん歩いて行く。
あたしは必死に追いかけた。
…桐生くん歩くの早いんだもん。
「どこに行くの?
桐生くんってば~!」
「疲れたのなら帰りなさい」
「帰らないもん!
だけどこの道さっきも通ったよね?
どうして同じ場所通っているの?」
「…あなたに関係ありませんよ」
「じゃあとことんついて行くから!
桐生くんが家に帰るまで近くにいるから!」
だって幸せなんだもん。
桐生くんの傍で歩いていることが。
中学の頃のあたしなら…信じられないよ。
「お好きにしなさい」
「やった!」
断られることもなく歩いて行く桐生くん。
行き先なんてわからないけど。
桐生くんの隣にいられるのなら、
どこへだってあたしは行くよ。