私は四人兄弟の末っ子。
上は三人とも兄だった。

対して、叔父――父の兄は、娘三人に息子が一人という、真逆の構成だった。


「慶にーちゃん」

「文月」

私が大好きだったのは、叔父さんの息子、つまり従兄弟である慶兄さん。
5つ年上の彼は、妹のように私をいつもいつも可愛いがってくれた。


私は多分、物心がついた頃からずっとずっと慶兄さんが好きだった。

本当のお兄ちゃん達と同じくらいか、それ以上に私を可愛がってくれた慶兄さん。

「文月、ほらごらん」

「なぁに?」

「これがタラの芽。棘があるで、指、刺さへんようにね。先っぽらへん、優しく折るんよ」

「はぁい」

小さい頃からずっと。

彼は私のそばにいて、私の成長と共に、私の中で存在はどんどんと大きくなっていった。

果てしなく優しくて、

果てしなく大きくゆったりとしたひとだった。