「じゃあ、俺、行くよ」

彼は優しくあたしに微笑んだ。

黒いバイクに、彼は跨がる。
その姿は月に照らされて、綺麗に浮かび上がった。

ずっと見ていたい。彼を。

だけどそれは叶わないから、あたしはあの月になろう。

彼が願いをかけてくれる、想いを乗せてくれる、あの月に。

そうしてあたしは、ずっとずっと悠ちゃんを見てる。

「お前は笑った方がずっと可愛いんだから、もう泣くなよ」

どこまでも彼は優しい。

「……うん」

「さよならは言いたくないな」

「うん」

「またね、って言いたい」

「うん、あたしも……」

「菜摘、またね?」

「また、ね…」

泣きそうになっただなんて、絶対に言わない。

さよならじゃないもん。またね、だもん。

いつか絶対、また、逢えるんだもん。