だけどあたしは本当は嬉しかった。

彼が私にだけ、心を開いてくれたこと。

痛々しい心の傷を、見せてくれたこと。

いつも笑顔で何もかもをオブラードに包んでしまう彼の優しさや暖かさは大好きだったけれど、あたしは彼が時折見せる切なげな横顔に胸を痛ませていた。

その原因を話してくれたことが、本当に嬉しかったの。

誰にも言えなかったんだ、お前以外には。

そういって彼は、涙するあたしの頬を、あの時も繊細なしぐさでそっとなでた。


彼はたくさんのものを抱えていて、きっときっと、ものすごく辛い思いをしたのだろう。

それから、彼の痛みはあたしの痛みになった。

そして、彼の喜びはあたしの喜びに。

あたしたちは、繋がってたの。

今日までは。