「フェイはいつ頃から学校へ行かせたらいいだろうな」

 ソファに座り、ふう、と息をつくアリア。そんな彼女に暖かいお茶を入れてやりながら、ランスは「うーん」と考える。

「リディルがフェイから離れられるようにならないと、無理かなぁ。それか、一緒に行ってくれるといいんだけど」

「出来そうか?」

「まだ駄目だね。せめて俺やアリアに怯えなくなるまでは。荒療治、という手もあるけど……あの子の性格を知らない俺たちが、それをすべきではないと思う」

「そうだな。悪い方に転がっては、あの子の母上にも……先代の惑星王にも顔向け出来ん」

「うん、もう少し様子を見よう。春か……秋の新学期か、そのあたりまでは」

「ああ」

 アリアは差し出されたカップを礼を言いながら受け取る。その隣にランスも腰掛けた。そして妻の肩を抱き寄せ、その額に口付けた。

「アリア、お疲れ様」

「ああ。ランスも……家のことと子どもたちの世話を、いつもありがとう」

 言いながら、お互いの頬を寄せ合う。カップの中のお茶が溢れそうになったので、腕を伸ばしてテーブルに置いておく。

「……こう寒いと、人肌が気持ちいいな」

「ふふ、そうだね」

「んむ」

 すりすりと頬を寄せ合い、髪の毛の感触を確かめ合う。その手は徐々に背中へと降り、お互いを引き寄せ合って距離をなくしていく。

 ……と。

「……フェイレイ!」

 くわっと目を見開いて、アリアが振り返る。

 リビングの入り口のところで、フェイレイがにまーっと笑いながら夫婦のじゃれあいを覗いていた。

「覗きとは何事か!」

「まあまあ、アリア……。ていうか、ここは家族団らんの部屋だからね……」

「むっ、そうだった!」

 アリアは慌ててランスから離れ、キビキビした動作で立ち上がった。

「で、何の用だ」

 顔を上へ逸らし、両手を腰に当てて不遜な態度で息子を見下ろす。その顔は若干赤い。

「寝る前のはみがき、忘れてたの」

「ならばさっさと行けっ!」

 ぶん、と腕を振り上げてそう言うと、フェイレイの後ろにいたリディルが、ビクリと肩を震わせた。

「あっ」

 いたのか! とアリアは顔を青ざめさせる。

 リディルは縮こまり、フェイレイの背中にピタリと張り付く。

「リディル、はみがき行こー」

 フェイレイは何も気にすることなく、リディルを張り付かせたまま廊下を歩いていった。

「う……い、いかん、怯えさせてしまった……ああ、私の娘とのラブラブ計画がまた遠のいたっ!」

「あはは……うん、仕方ないねぇ……」