『そこにいるのだろう? 私の妹姫が』

 見つかるのは時間の問題だとは思っていたが、何故ここが特定出来たのだ。しかし動揺を見せることなく滑らかに答える。

「皇女殿下は行方不明、もしくは亡くなられたと聞き及んでおります。私は存じ上げません」

『“エインズワース”』

 その名前に、アリアはピクリと眉を動かした。

『ギルドが匿っていたのだな。“エインズワース”、我が妹姫を連れ去った罪深き元宮廷精霊士。その一族がまだ生き残っている……そうだな?』

 エインズワースを罪深き者だと。そう言うのか。自らがリディアーナを彼らに託したのというのに。その違和感に眉を潜める。

「申し訳ありません。そのような大罪人とは知らず……雇っていたのは確かでございます。すぐに、陛下の仰るとおりに処分いたします」

 アリアは一瞬だけ黙考した後、深く頭を下げた。

『結構。では、すぐに都で公開処刑とする。連れて参れ』

「承知いたしました」

『それから、リディアーナだ。迎えをやる、必ず差し出せ』

「……皇女殿下につきましては、解りかねます。申し訳ございませんが……」

『ならば、セルティアは国ごと吹き飛ぶが良い』

 アリアは目を見開いてカインを見た。カインは変わらず薄い微笑みを浮かべている。

 立体映像だというのに、紫暗の瞳から伝わってくる威圧感は凄まじく、アリアの背中を嫌な汗が伝っていった。

 なんということだ。

 ターニアも、グルトスも、滅せよと命令を下したのは他でもない、このカインだと。これではっきりしてしまった。

 何故だ。

 リディアーナを保護するためエインズワースに彼女を託しておきながら、何故今になってこのような仕打ちを。

 しかも、この震えそうになるほどの威圧感は。