「遅かったな」

 ランスのこともあるので、アリアはここ最近ピリピリとしたオーラを出していた。おかげで今は近づいてくる秘書がブライアンだけである。

「中央大陸近海に出現する魔族が増えていたというのもあるそうですが、上陸するのにもかなり時間を要したそうです」

「上陸するだけで何でそこまで」

「魔族との戦闘になったそうで」

「……はあ!?」

 アリアは思わず声を上げた。

「惑星王の御膝元だぞ。海ならまだしも、陸でか」

「はい」

 ブライアンも神妙に頷いた。

「……続けろ」

 アリアは自分の感情はとりあえず横に置き、調査報告を促す。

「まず、ギルドまで辿り着けません。魔族の猛攻が凄まじいそうです。数がセルティアの比ではないそうで。それで、諜報部に私の知り合いの商会に接触するように言ったのですが……彼らは皇都から逃げ出していました。先程やっと連絡が取れて……今は、北のアライエルにいるそうです」

「魔族のせいか?」

「それもあります。ですが、2、3年前より税率が跳ね上がり、とても商売が出来るような状況ではなくなったのだそうです。それでも何とかやっていたそうなのですが、そこに魔族の襲撃があり……避難を余儀なくされたと」

「税収を増やす必要があったのか?」

「いえ……それが、分からないのだそうです。ただ、その税率を上げたのは都政を取り仕切る宰相ではなく、惑星王なのだそうです」

「……は? 惑星王が、って……」

「私も俄かには信じられません。……ですが、知り合いの話によると、どうも真実のようです。他にも明らかに皇家に矛先が向くような政策を取り始めていて……皇都民は混乱しているそうです。逃げ出した者たちと直接お話になりますか?」