オースター島まで旅をすることになったランスは、いつもグリフィノー家が世話になっている飛行艇パイロット、マックスライアンに北の大陸の最北の港町まで連れて行ってもらい、そこからは船を借りてオースター島へ渡ることにした。

 北は東よりも先に冬の季節が到来している。オースター島は流れ着いた流氷に囲まれていて、船では接岸出来ない。海上から吹き荒れる猛吹雪の中、氷の上を歩いていくようになる。

 大分弱った様子のランスにそんな過酷な旅が出来るとは思えず、マックスライアンは心配していたが、大丈夫だと軽く笑ってフラフラと歩き出した。

 オースター島にも住人がいくらかいる。けれど、アストラほど親しい人間がいるわけではないし、関心を持つこともないだろう。そうして氷の世界に立て篭れば、もう少し自我を保っていられる。

 襲い掛かかってくる猛吹雪に耐えながら、ゆっくりと海を進み、氷の雪原に立つ。

 オーロラの島に辿り着くことだけに集中して、一週間ほど。

 だんだんと生命の気配が薄れていくにつれて、ランスは心が穏やかになっていくのを感じていた。

 これで誰も傷つけることなく、星に還ることが出来る……。





 ランスはオースター島に辿り着いてからも、村に踏み入ることはせず、岩陰でひっそりと命を繋いでいるらしい。下手に人と関わると破壊の衝動に襲われるからだ。

 孤独の中にも安らぎを見出しているらしい夫を抱きしめてやりたい衝動にかられながら、アリアは淡々とギルドを運営していく。

 そうして冬に入った12月。

 フェイレイたちにセルティア国王クラウスから直々に、王都フォルセリアに現れた魔族の討伐依頼が来た。強固な防御壁に覆われているフォルセリアだが、それすら破られるようになってきたのだ。不安の声を上げる市民に、王は『セルティアの英雄』の名を使って安堵をもたらそうというのだ。

 アリアはそれを受け、フェイレイとリディルに討伐命令を出した。彼らならば上手くやるだろう。

 その後、ブライアンから新たな報告があった。やっと諜報部隊から連絡がきたのだ。