国民的アイドルと恋しちゃいました。


栞は栞で、…颯斗、と話せたことで嬉しいのか舞い上がっちゃってるし…


「そっか、じゃあまたな?莉奈」


「え?…う、うん。じゃあ…ね。」


少しだけ目を見て手を振ったけど…やっぱり目を合わせられない。


ダメだ…。

だって、あたし1年くらい男の人と喋ったりしてないんだもの。


それに今さらprinceの神崎颯斗なんだ…って思えてきちゃって…


「莉奈ったら緊張しすぎでしょ。」

「…う、うるさいっ!」

あたしって…こんなに不器用な女だったっけ?



「それじゃ、また明日ね~」

「うん、また明日!」



そして栞とあたしの家は同じ住宅街にあって近いから、お互いの家の中心でばいばいした。


「ただいまぁー」

「おかえり、遅かったじゃない。
もうお風呂沸いてるから入りなさいよー」


ママがもう帰ってきていて時計を見ると7時を回ってた。


「はーい」

2階の自分の部屋に入って、お風呂に入る準備をしてお風呂場に向かう。



あたしは1日の中でお風呂に入ってる時間が1番大好き。


1人になれて、誰にも見られない1人の空間だから。



『神崎颯斗』


「わっ、あたし何書いてんの!」


頭を洗いながら目の前にある曇っている鏡に何も考えずこんなことを書いてた。


勢い良く消したものの…自分の行動があまりにも気持ち悪すぎて自分で自分に引く。


あたし…いつの間にこんなに、はっ颯斗のことをす、好きになっちゃってたんだろ。

「次、登校する日。皆さんの元気な顔を見るのを楽しみにしておきますね。」



小学生かよっていうほどの言葉を先生が言って終わる。


「起立!礼。」

「「さようならー」」



「ねぇー、去年は受験で全然遊べなかったから今年は沢山遊ぼうね!」

「うわ…俺部活ばっかなんだけど。」

「今年の夏休みは遊ぶぞー!」


…そう明日から夏休みなんです!


あれからあっという間に月日が流れて夏休みになった。

栞と某遊園地に行く予定と、

優花とショッピングモールで遊ぶ予定と、

紗羽とあたしの家で宿題をしたりして遊ぶ予定と、

栞と優花と紗羽と4人でプールに行く予定がある。



あれから毎日、颯斗が学校に来ていてお昼休憩の時に行くと「おい」と声を掛けられて屋上に連れて行かれる。


自分の気持ちがやっと落ち着いて颯斗とちゃんと接することもできるようになった。


ほら、颯斗って普通に呼べるようにもなったし。


あの映画の次の日なんか颯斗に呼び出されて屋上に連れて行かれても目を逸らしてばっかりだった。

でも1つ気になることがある。


だって颯斗…屋上の時は堂々と「莉奈」って呼んでくれて沢山話してくれるけど、校舎内で話し掛けられたことなんて1度もない。


まぁ…話し掛けられても他の子からの目があるから困るんだけど…



「…な、莉奈っ!…」



いや、でも皆の目が向けられても「莉奈」って話し掛けてくれた方が嬉しいじゃん?



「…ぉぃ…おいっ…莉奈…莉奈って!…」


…ん?

誰かあたしのこと呼んでる?

「莉奈ぁー」


席替えをして前にいる栞があたしに話し掛けてきた。


「栞?どうしたの?」


今は席替えをして窓側の端っこであたしは席の1番後ろで前に栞がいるすっごい良い席。


今、ちょっとボーっとしていて窓の外を見ながら普通に考え事してた。



…え、なんか視線感じるんですけど。


ふと周りを見渡してみると皆すごいあたしを凝視している。


「え…栞、どういうこと?」

「廊下…さっきから莉奈のこと呼んでたよ?」


…廊下?



「莉奈、僕何回も呼んだんだけどな…」


いつもは俺って自分のことを呼ぶくせに皆の前では僕って自分のことを呼ぶ…仮面の王子様で、

あたしの大好きな人が立ってた。



「どうして、颯斗がいるの?」


あまりにもびっくりしすぎて立つことが出来ず、廊下の颯斗に聞くのも遠すぎるから栞に聞いた。


でも…

「なんでだろ、知らないー」

そんな答えが返ってきた。

「ねぇ莉奈、ちょっと来てくれるかな?」

「…え?」


い、痛い…

女子からの睨みつけられるような視線と男子からの唖然としたような視線…


「おーい!ごー…よーん…さーん…に」

「あ、はい!はい!今すぐっ!」

「うん」


うんって言った後のあの笑み…


皆から見たら普通の王子様かもしれないけど、あたしはもう笑いの種類が分かってしまった。

絶対に馬鹿にしてる笑みだよ…