「だから、これ観に行くんだろ?
栞ってやつがお前と行くって言ってたじゃん…」
全然思い出せないから、記憶を辿って精一杯思い出す…
〝 あの、颯斗くん!
あたし…今度莉奈と颯斗くんの映画観に行きます!〟
そういえば栞が勝手にこんなこと言ってた…
てか…それよりも!
「さっきからお前お前って…あたしにはちゃんとした名前があります!」
「…ん?あー、一ノ瀬莉奈だろ?」
「分かってんじゃん。じゃあさ…っ「莉奈」
「…え?あっ、いや下の名前で呼べとは…いっ言ってないし…」
いきなり莉奈って呼ばれてびっくりしただけ。
別にそ、そんな意識して動揺したとか…そんなんじゃない。
「あははっ、じゃあとりあえず観に来いよ」
「み、観に行くわけないでしょ!
それに…あたしじゃなくて栞に渡せばいいでしょ?
わざわざこんなことまで手を引っ張ってまで連れて行かなくてもっ…」
「莉奈に渡したかった。それだけ。
じゃあね、莉奈ちゃん?」
屋上の扉まで行ってた中身最悪男がこちらを振り向いて即答してから…
最後は王子様のフリをして帰って行った。
「なんなのよっ…あいつ…っ」
最後に少し見せた笑った顔。
王子様なんかじゃなくて、普通の素のあいつの笑顔だった。
素直な…綺麗な笑顔だった…
だ、だからといって、芸能人のことを嫌いなことには変わりないけどっ!
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音を聞いて、ハッとした。
「…絶対に問い詰められる…」
「あ、莉奈!」
「莉奈ぁー!ちょっと右手を出してあたしに触らせなさい!」
「莉奈…大丈夫だった?」
教室に戻ると栞、優花、紗羽というお決まりの順番であたしの所に走ってきた。
優花さん…下心満載すぎるでしょ。
あたしがあいつに掴まれた右手を差し出すとすぐに同じように掴んで、
「やばい、あたし颯斗くんと握手してる気分!」
とか言い出してる…
「颯斗くんは莉奈に何の用だったの?」
栞にそう質問されてさっき渡された映画のチケットをポケットから取り出した。
「これを渡してくれた…」
持っているチケット2枚の中1枚を栞に渡すと、栞は見る見るうちに笑顔になって、
「え、ちょっとこれ!今週の日曜にある映画の試写会のチケットよ!あたし…これ落ちたんだよね…」
とすごい興奮しながら話してくれた。
試写会って映画の公開の日に観て、終わったあとに映画の舞台上に出演者が来るやつ?
こんなチケットをわざわざ渡してくれるなんて…
栞が前に「お父さんとお母さんと潤とあたしの分で4枚分頼んだのに落ちた…」とか言ってたっけ?
潤というのは栞の彼氏の松井潤也‐マツイ ジュンヤくんのこと。
「すごい!ありがとう莉奈!
ってことで、日曜日に一緒行こうね!」
肩を掴んですごく前後に揺らされた。
ここまでされて断れないでしょ…
チケットもあるし…
あ、でもすごく羨ましそうに見つめてる優花に渡すっていう手もある!
…でも、わざわざあたしに渡してくれたんだし、行くしかないか。
「うん、じゃあ日曜日にね。」
「いやー、ほんとに楽しみ!
もうめちゃくちゃお洒落していくんだから!」
───そして日曜日。
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✉栞
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日曜日、
映画は12時からなんだけど
9時くらいから遊ぼ!
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っていうことで只今8時半。
精一杯お洒落して、メイクして、髪の毛も綺麗にして…30分前には準備が終わってしまった。
服はグレーの肩までの服に白いサロペットで、少しヒールが高いシューズのようなヒールを履く予定。
あたしの髪の毛は少し茶髪で肩までの少ない髪質なのでいつもは少し綺麗にするだけで大丈夫。
でも今日は横髪を出して両耳に掛けて、ヘアバンドを付けてみた。
ナチュラルメイクでほぼスッピンのようだけど、一応綺麗にした。
そんな気合いを入れてるわけでもないはずなのに……洋服は昨日から用意して、
今日だって9時にうちに栞が迎えに来てくれるから朝はゆっくりあるのに7時に起きて用意して、
おかげさまで30分前には準備が終わってしまった。
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✉颯斗
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莉奈〜
今日ちゃんと来るんだぞ?
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何故かメアドまで交換するはめになった。
金曜日のお昼休憩の時に…
「おい、ちょっと屋上に来い。」
いつものようにお昼休憩の時間に中庭に行くと今日は蓮くんと悠真先輩がいた。
中身最悪男はいないのかな?なんて、ぜんっぜん考えてないから。
少し栞と優花が話してるのを聞いてたら左耳の方に息が吹きかかり中身最悪男から話しかけられた。
「わっ!!え…嫌です。」