「愛してる…本当に愛してる。こんな簡単に口にしちゃいけないのかもしれないけど、心の底からそう思ってる。」
颯斗があたしの目を見てそう言う。
「あたしだって…あたしだって颯斗のこと、心の底から愛してるよ。ずっと待ってるから。」
またあたし達は抱き合ってキスをする。
ずっとこうしていたい…
時間なんて止まればいいのに…
でも、時間は過ぎていくもので。
「もう行かなきゃだわ、俺…」
「そうだね…、ちゃんと涙拭かなきゃ。颯斗は王子様なんだからっ!」
颯斗がいつもあたしの涙を親指で拭き取るみたいに、あたしも颯斗の涙を親指で拭き取る。
「そうだな、俺は王子様だもんなー。」
「あたしの前では俺様な王子様だけどねー。」
「なら莉奈は、ツンデレ姫だよ。最近は素直だけど。」
そう言って、あたしの頭をクシャクシャする。
颯斗の全部の行動が好き。
アメリカに行っちゃうなんて、怖い…
でもね、颯斗なら信じれる。大丈夫。
「莉奈、待っててな。じゃあ…またな!」
「うん!またね!!」
さよならじゃないから、バイバイは言わない。
ちゃんと笑顔で言えたよね?
とびっきりの笑顔で言えたよね?
颯斗は、テレビでは見せない…あたしの前でしか見せない笑顔で手を振ってくれた。
もう恋なんてしないって決めてた。
芸能人となんて、ありえないって思ってた。
なのに、なんでだろう…
今は国民的アイドルに恋してしまってる。
大好きで大好きでどうしようもないくらい、大好きになってる。
あたしは待ってるよ…
あれから、お姉ちゃんのとこへ戻り、princeが来て…颯斗がアメリカに発つのを見送った。
たくさんのファンの皆が泣いたりしていた。
やっぱり、颯斗は愛されてるなってまた実感したの。
でもね、今度は住む世界が違うなんて思わないよ…
アメリカに発った、颯斗が乗っている飛行機を見ながら誓ったよ。
颯斗をずーっとずーっと愛してるって…
その時、勘違いかもしれないけど、颯斗の声が聞こえたの。
『俺もずーっとずーっと愛してるよ。』
って…
あたしの中でいつの間にか、こんなにも颯斗の存在が大きくなっていたなんて知らなかった。
でも、颯斗のおかげであたし少しは大人になれたよ。
そして強くなれたよ…
だから、いつまででも待ってるよ。
あたし達なら大丈夫。
ーあれから1年半後。
「もう、明日卒業式だよー…」
「莉奈ってば泣くの早いよ〜!」
明日が卒業式だということで泣いているあたしを、紗羽がよしよしってしてくれる。
でもそういう紗羽だって涙目だし、優花だって、栞だって、もう泣きそうな顔してる。
あたしはもう高校3年生になり、皆の進路は決定していて、これから皆バラバラになる。
栞は、小さい頃からの保育士という夢を叶えるために、幼児保育のことが学べる専門学校に行く。
優花は、アパレルショップの店長さんになるのが夢らしく、アパレルショップに就職が決まってる。
紗羽は、お母さんが看護師さんということもあって、看護師になるために大学に進む。
あたしは…
あたしは、正直言って…夢は?と聞かれると、
「颯斗のお嫁さん。」
しか出てこない…
でもそんなこと言ってられるわけはなくて…
先生とたくさん話し合った結果、英語のことが学べる国際英語学部がある大学に進学することになった。
もともと英語は好きだし、得意科目でもある。
家族で何回か外国に旅行に行ったこともあるから、いいかなって思って。
颯斗に手紙で背中押されたっていうのもあるんだけどね。
颯斗…
颯斗はまだ帰ってきてません。
颯斗は日本の高校を辞めて、アメリカの高校に通っている。
卒業は…したのかな?
最近、手紙の返信が来てないから、颯斗のことが全然分からない。
颯斗とは手紙交換をしている。
あたしは颯斗から手紙が来たらすぐに返事書くんだけど、颯斗はそうはいかないみたいで…
送って2週間以内に返ってきたら、まだ早い方。
遅くて1ヶ月後だったりするもん。
でもこの前送った日から、もうずいぶんと経つ気がするけど…
返事がこない。
まぁ、でも明日は卒業式だから、颯斗ではなく栞達のことを考える。
高校に入って、色んなことあったな…
その度に3人に支えてもらって、ほんとに感謝してる。
栞は、いつもすぐにあたしの気持ちに気付いて、そっと背中を押してくれた。
栞がいなければ、今いろんなことをたくさん後悔してる気がするな…
優花は、いつも元気であたしを元気にしてくれた。
思っていることを全部言っちゃうからダメな時もあるけど、それに背中を押されたこともある…
紗羽は、影であたしを支えてくれたよね。
あたしをそっと包んでくれてた、そんな気がする…
栞、優花、紗羽。
この3人がいたから、高校生活3年間充実できたんじゃないかな。
あたしもこの3人に、何か出来てあげてたらいいな…
…ー卒業式
いつも朝グズクズして起きれないくせに、今日は早くに目が覚めて、すぐに起きることができた。
1階に降りると、やっぱりママはもう起きていて、朝ご飯を作っている。
毎日お弁当を作ってくれて、毎日何時に起きてたのかな…
「あら莉奈、今日は早いのね。おはよう。」
「おはよ、なんか目が覚めちゃって。」
「そうだ、パパを起こしてきてくれる?」
「はーい。」
ママに言われるままに2階に上がり、パパ達の寝室に入る。
パパとママ、お揃いのパジャマなんか着て…
そんなラブラブなパパとママが、あたしは大好きで、自慢なんだけどね。
「パパー、起きてー!今日、あたしの卒業式だよー!」
「んー…」
なかなか起きないパパ。
お姉ちゃんの寝起きが悪いのは、パパに似たからだよ…絶対。
「ねぇってばー!今日、卒業式だって!」
パパをバシバシ叩きながら起こす。
もう反抗期は終わったけど、反抗期に入った中2くらいの時からかな…
あまりパパと話してないよね。
なんか卒業式の日って、全てを振り返っちゃうよ。
悲しくなっちゃう。
「んあー、じゃあ、そろそろ起きようかねー、」
「やっと起きた。」
バシバシ叩き続けたら、やっと起きてくれた。