国民的アイドルと恋しちゃいました。


「あ、あとあたしもう1つ、ビックニュースを聞いた!」


皆がショックで何も発さなかったところで、突然優花が話し始めた。


「え、なになに??」


栞が興味津々な顔で、優花に近付く。


「もー栞近いー。あ、あのね、噂なんだけど、颯斗くんがアメリカにいっちゃうんだって!」

「え……」

「優花、それってほんとなの?」


栞が絶句して、紗羽が問いただす。

あたしは、言葉も出ず、息もちゃんと出来てるか分からない。

嘘でしょ?

アメリカに行くなんて、嘘だよね?

どうして……、

「噂だから分かんないけど…」


「莉奈?大丈夫…?」

「まだ噂だし、分かんないから…」


栞に、紗羽、…


「あ、あたし…ごめん!でも、莉奈、ほんとは颯斗くんのこと大好きなんでしょ?大好きならアメリカなんかに行っちゃう前にちゃんとよりを戻さないと…!大好きなら大好きだって言うべきだよ!」


優花まで…


皆が言いたくても言えなかったことを優花が言った。

皆、ごめんね…


「莉奈…、莉奈はもう気付いてるよね?今莉奈がやるべきこと。」


紗羽が優しくあたしに語りかける。

…颯斗としっかり話すことだよね。


「颯斗くん、さっき屋上に行く所をあたし見たよ!担任分かったらメールするね!」


栞がそう言う。



「あたし……行ってくるね。
栞、優花、紗羽…ありがとう!」


1人1人の顔を見てそう言ったあと、走って教室を出た。



ちゃんと話す。


あたしはまだ颯斗が好き。

大好き。

それをしっかり颯斗に告げるの。

バン!


勢いよく走って、勢いよく屋上の扉を開けた。

と、同時に振り返る颯斗。

颯斗はいつもお弁当を食べていたベンチに座っていた。


「莉奈…」

「颯斗、あのね、あたし…っ、」


颯斗に近付いて、ちゃんと思ってることを伝えようとしたら、視界が突然暗くなった。


「ごめん。ごめん…莉奈、ごめん。」


あたしは颯斗に抱きしめられてた。


「俺、莉奈と別れたくねぇよ。でも、もう無理なんだ。それを伝えるために今日学校に来たんだ。」

ふぅーと息を吐く颯斗。

そんな姿もかっこ良くて、こんな人とあたしは付き合ってたんだって今さら実感する。


「俺ね、」

「アメリカに行くんでしょ?」


颯斗の言葉を遮って、あたしから言った。

ちゃんと思ってることを言わなきゃ…


「なんで、それ、」

「噂で聞いたの。
あのね、あたしね、颯斗が…好き。
あたしから別れようって言ったけど、やっぱり好きなの。大好きなの。
颯斗がアメリカに行くとしても、好きな気持ちは変わらないから…」


ふぅ…

言えた……

「莉奈…
てか、俺はおまえと別れたつもりなんて無かったけどな!メール返信してねぇだろ?」


そう言って笑顔で、あたしの頭を撫でる颯斗。

この日をどれだけ夢見たかな…



「莉奈さ、なんで別れようなんてメール送ってきたわけ?」


突然の思ってもみなかった質問に驚いて、「へ?」なんていう変な声を出してしまった。


「へ?じゃねーよ。
あの報道が出たからか?」

「う…うん。あたし、あの報道をテレビで見た後、ネット見たの。やっぱりさ、あたしと颯斗は住む世界が違うなって思っちゃって…」

全部ほんと。

本当の気持ち。


「ほんとばか。なんで住む世界が違うなんて考えるんだよ。住んでる世界は同じだろ?同じ世界に俺と莉奈は住んでる。同じ人間だろ?同じ高校に通ってるだろ?」

「ふふっ。」


颯斗が真面目な顔して話すのを見て、思わず吹き出してしまった。


「何笑ってんだよー!」

「だって…!あ、でもね、颯斗のバレンタインイベントで颯斗の言葉を聞いて、少しは考え直したよ?」

「は、莉奈おまえ、来てたのか?」


あのイベントのこと、テレビでたくさん報道されていたけど、颯斗が発言した言葉は流されていなくて、似た言葉をアナウンサーが説明してたの。

だからあの言葉はその場にいないと分からないってわけで…

「うん、実はね。嬉しかったよ、颯斗の言葉。」

「なんだよ、おまえ…」


少し照れた顔であたしから目を外す。

あたしを屋上に初めて連れてきて、チケットを渡してきた時と同じ顔。


あれからもうすぐ1年経つんだよね…

たった1年だよ。

颯斗はこれからどのくらいアメリカに行くのだろうか。

いつ行くのだろうか。

何も分からない。


でもね、今は何も考えずに颯斗と2人でいて、幸せな時間を過ごしたいの。

「あの時言ってたこと、全部ほんとだよね?」

「なんだよ、それ」


照れてるのか、少しぶっきらぼうになる颯斗。


「今でも同じ気持ちでいてくれてる?」

「…あぁ。」

「もう1回言ってよ!あの時、颯斗の顔見えなかったんだもん。」

「はぁ〜?」


思いっきり嫌な顔する颯斗。

でもすぐに笑顔になって、


「愛してるよ。」

「ふふっ、あたしも。」


そう言い合って、お互いの唇が重なる…