「莉奈、廊下に並ぼー!
今から体育館に行って入学式だって。」
あ、そうか…
入学式があるんだった。
栞に誘われるまで1人でボーッとしてたから何も考えてなかった。
そして、廊下の異様な空気にも気付いてなかった。
「わっ、なんでこんなにLIVEみたいなの?」
「…あたしもそれ思ってた。」
皆、A組を見ようと必死でprinceの蓮くんと颯斗くんが皆に笑顔を見せるとこれでもかというほど女子達は叫ぶ。
男子達はそんな女子に呆れてるみたいだけど……そんな男子だって人のこと言えない。
モデルのみいあちゃんや女優の川野百合華‐カワノ ユリカちゃんを見る時の男子の目…
完全にハートになってる。
女子のようにキャーキャーはしないものの、男子だって人のことは言えない。
「静かにしなさいー!
ちゃんと整列して体育館にいきますよ。」
うちのクラスの担任の谷山藍‐タニヤマ アイ先生が叫んでる。
キャーキャー叫んでる女子たちには全く聞こえてないみたいだけど…
「ーーーっ!?」
なんか少し視線を感じた。
少し周りを見渡してみたらA組の方向から視線を感じてそちらを見てみたら颯斗くんがこちらを見てた。
少し目が合ったような気がして、すぐに前を向いて颯斗くんから目を逸らしたけど…
なんなの、あの人?
やっぱり……芸能人は嫌い。
あたし、こんな高校だって知ってたら少し遠くたって…栞と離れるのは嫌だけど…絶対に違う高校に通ってたのに。
キーンコーンカーンコーン
4時限目が終わり、今から昼ご飯休憩の時間だから皆一斉に立ち上がりお弁当を各自に取り出す。
入学して1ヶ月経ち学校にも勉強にも慣れてきてクラスメイトとも仲良くなってきた。
それでも……やっぱりA組には絶対に慣れることができない。
クラスメイトのほとんどがお弁当を教室で各自に食べだす。
あたしだってその1人。
「よし、莉奈食べよ!」
「やっと、お弁当の時間だー!」
「もう…あたし…お腹すき過ぎて死ぬかと思ったからね?」
今話してたのは上から栞、 優花、紗羽。
優花こと、村上優花‐ムラカミ ユウカは食べることが大好きでいつもうるさくて元気。
沢山食べるくせにモデルかって言うほど細く、身長は155cmで小さめだけど、顔はすごく大人びてる、
紗羽こと、飯田紗羽‐イイダ サワはいつも冗談ばかり言ってあたし達を笑わせてくれる。
身長は160cmであたしと同じくらいなのにスタイルが良すぎてもっと高く見られる。
顔は少し童顔なため、幼く見られることが少し多いらしい…
あたしはこの4人とお弁当を毎日食べている。
休み時間だってずっと一緒にいる、いわゆるいつメン?っていうやつ。
入学当初、“いいだ”と“いちのせ”で前後だったあたしと紗羽はだんだんと話していくうちに仲良くなり…
“みずの”と“むらかみ”で前後だった栞と優花も仲良くなり、この4人で一緒にいることが多くなった。
「ねぇねぇ、今日ね、蓮くんと颯斗くん学校に来てるんだって!」
「え、ほんとに?!」
「じゃあ、行くしかないじゃん!」
また始まってしまった3人のprinceトーク。
この3人はprinceの大ファンということでも話が盛り上がっている。
紗羽は普通にカッコイイからってことだけだから、そこまでのファンというわけでもないみたいだけど…
やっぱり女子高生。
アイドルの話でミーハーになるのが普通。
それじゃ、あたしが普通じゃないみたいな言い方だけど…あたしだって1年前までは皆と同じようにキャーキャー言ってた1人。
「よし!皆食べ終わった?」
また1番最初に食べ終わった優花が早く中庭に行きたいらしくて皆を急かしてる。
そんな皆が食べるの早いわけないじゃない…
「うん!もう食べ終わった!」
「あっあたしも、もうすぐー!」
「…え?!何でそんなに食べるのが早いの?」
いつもは優花が早く食べ終わって栞と2人で中庭に走って行くのに…今日は紗羽まで食べるのが早い。
「莉奈ー!早くしてよぉ…急いで中庭に行くんだから!」
味わって食べる暇もなく、これからの授業でお腹が空かないようにとりあえず胃に入れようとかけこむ。
「んー!食べ終わった!」
「よし、しゅっぱーつ!」
「ちょっ!栞達待ってよぉー!」
あたしは颯爽と中庭に向かう3人を急いでお弁当を片付けて走って追いかける。
「あ…いたよっ…」
少し声を潜めて優花が言う。
「あ、栞ちゃん達が来てるー!」
少し離れた所か少し嫌そうな顔をした2人をよそに叫んでくる大地先輩。
「大地くーん!」
C組に中2の時から付き合っている彼氏がいるというのに走っていく栞…