確かに…颯斗だって15歳の1人の高校生。
あたし達と何も変わらない高校生であって、人間…
「莉奈が颯斗くんのことを遠い存在に見えてしまうのはしょうがないと思う。でもね、莉奈は気付いてるんじゃないかな?」
「……ん?…」
「莉奈はさ、颯斗くんのどんなとこが好きなの?」
どんなとこって…
栞が描いてる颯斗のイメージ壊れちゃうかも知れないけど…
「俺様でいつも自分勝手で、なのに時々優しい表情をして…あたしが反論するって分かってるようなことを言ってきて…、でもあたしその時間が1番大好きなの。」
「ふふふっ、その颯斗くんはさ…学校での颯斗くんでしょ?」
「…う、ん。」
確かに栞の言う通り、学校での颯斗は…
王子様で〝 俺 〟じゃなくて〝 僕 〟って言う。そして、いつも優しくあまり喋らずに見守る感じでカッコ良い雰囲気を出してる。
「莉奈はprinceの神崎颯斗じゃなくて、一高校生の神崎颯斗に恋してるのよ。」
栞はどうしてこんなにもあたしの心に入ってきて、あたしの心を動かすの?
「莉奈と颯斗くんの住む世界が違うなんてあたしは思わない。2人とも園城高校の生徒で同じ1年生なんだから!」
「そう…だよね。しおりぃー!」
「もーほんとに世話の焼ける子だなぁーもう!」
栞に抱き着いたあたしの頭を栞がなでなでしてくれた。
「住む世界が違うなんて思っちゃダメよ?莉奈も颯斗くんも同じ人間なんだからね!」
「…うん…うんっ!ありがとう!栞…ありがとぉー!」
栞はやっぱりあたしの親友だ。
紗羽と栞がアイコンタクトをとってたのは、あたしにこの話をするため?
だとしたら、紗羽もあたしのことを分かってくれてたの?
あたし…ほんとに幸せ者だね。
「…ということで、これから2週間…2週間後の体育大会に向けて練習を頑張りましょうね。」
この先生はあたし達のことを小学生と思ってるのかな?
いつも小学生に語りかけるかのようにあたし達に語りかけてくる。
練習を頑張りましょうね、って…
夏休みも終わり、夏休み明けのテストが終わったと思えば2週間後には体育大会が待っている。
そして今、体育大会の種目決めが終わったところ。
1年生から3年生まで4クラスと決まっており、毎年1年生から3年生までのA組,B組,C組,D組が1グループになっている。
園城高校のA組はどの学年も芸能科で、有名な芸能人のほとんどが園城高校に入学するため…
園城高校の体育大会や文化祭などの行事はすごく大規模に行われる。
そして体育大会や文化祭の日は全ての芸能人の予定が無いため、芸能人皆が参加することになる。
…もちろん颯斗も。
園城高校の体育大会は大規模に行われるけど、芸能人だからと言って特別扱いしないのも園城高校が好かれる1つの理由だと思う。
「ねぇ莉奈、特別種目出ないよね?」
休み時間になったから、前に座っている栞が聞いてきた。
「うん、出ないよ」
「良かったぁ!莉奈とずっと一緒がいいもんねっ!」
そう言う栞はニコニコしててほんとに可愛い。
でも栞、昨日までは「潤と一緒が良かったぁ」って泣き叫んでたんだから。
特別種目っていうのは普通の種目と別に決まった人だけが出る種目のこと。
普通の種目は学年で争う学級対抗リレー、学年の男女別で争う徒競走、学年別の色んな種目、そして学年で踊るフォークダンスがある。
特別種目は学年の各組からの代表だけの全組対抗リレー、借り物競争とあと綱引きなど色々ある。
全組対抗リレーは100m,200m,400m,800m,1000mがある。
あたしはだるいっていうのもあり、全組対抗リレーに出ない?って先生に頼まれたけど断った。
「はぁー体育大会って楽しいんだけどさ、焼けるから嫌だよね…」
栞は中学の頃にバレー部で、バレー部は学年でもすごく白い方なのにバレー部の中で1番目くらいに白かった。
今も紫外線には敏感で「曇りの方が紫外線強いんだよ?」なんて言って外の部活動の子より日焼け止めを塗っている。
「あ!大地くん達の種目も聞かなきゃ!」
今からテンションが上がって目をキラキラさせてる栞…
───そしてお昼休憩の時間
「大地くん達は特別種目に出るの?」
目を輝かせた栞が真っ先にお弁当を食べ終えて、走って中庭までやって来たと思えば単刀直入に聞く。
栞ったら潤也のことを大好きなくせにprinceにベタベタし過ぎじゃない?
潤也はそういうとこも含めて栞が好きなんて言うから大丈夫なんだろうけど…
「僕達は皆、全組対抗リレーに出るよ!あと、僕は綱引きに出るよ!今日はいないけど…秀平と蓮も!」
秀平先輩は今、映画の撮影でフランスに行ってるから滅多に中庭には来ない。
…体育大会には帰ってくるみたいだけど。
蓮くんもモデルか何かで最近来ていない。
「僕は借り物競争に出るよ!颯斗もな。」
悠真先輩が笑顔であたしの方をチラッと見ながら言ってきた。
え、もしかしてあたしの気持ち知ってる?
いやいやいやっ!
そんなわけ…ない、よね?