『さぁ続いてはprinceです!』


“秀平くーん!”
“大地くーん!”
“悠真くーん!”
“蓮くーん!”
“キャー!颯斗くーん!!”



「キャー!やっぱりいつ見てもカッコイイ…」



リビングから聞こえる2つ年上で今高2のお姉ちゃんの声。


正式に言えば高3なのかな?



明日からあたしは高校1年生で、明日は入学式があるから。


それにしてもあたしには正直言ってお姉ちゃんがそんなにキャーキャー言う意味が分からない。

1番歓声が大きいはやと…?という人なんかは良さがあたしには全く分からない。


5人グループのprince(プリンス)というグループはグループの名の通り皆王子様のような顔をしてる…らしい。



リーダーの井上秀平‐イノウエ シュウヘイは皆のまとめ役でしっかりしていて、高3という最年長。


間中大地‐マナカ ダイチはprinceの中でも可愛い顔をしておふざけ役で、高2なのに中3くらいに見える。


池畑悠真‐イケハタ ユウマはバラエティ番組などでも活躍していて、高2でprinceの司会役。


浅井蓮‐アサイ レンはモデルもやっておりprinceの中で1番背が高く、高1で空気を読んで場の雰囲気を変えるのが得意。


そして神崎颯斗はprinceの中でも高1で最年少なのに対して1番人気があり、俳優やモデル,バラエティ番組でも活躍していて、いつも静かにカッコ良く決めている。

このprinceというグループは幻と言われる程、チケットの倍率がかなり高い。



なんでも500万人に1人の確率でしか当たらず、あんなにファンのお姉ちゃんでさえ当たったことがない。



そんなに幻と言われる理由もあたしには全く分からない。



じゃあ、なんでそんなにprinceについて詳しいのかって?


それは……あたしの周りにprinceの大ファンが多いから。



まずはあたしの2つ上のお姉ちゃんである一ノ瀬結奈‐イチノセ ユナ。

そしてあたしの親友である水野栞‐ミズノ シオリ。

あたしのママでさえも。

もちろん中学の時の教室にもprinceのファンはほぼ女子全員と言っていいほど沢山いた。

むしろ全校生徒の女子の大半がファンだと思う。



皆から何度princeのことを聞いたって何も思わない…


だって顔がいい人に性格がいい人なんているわけないもの。



princeのことを良く思っていなくても嫌でも情報が入ってきた結果……こんなにも詳しくなってしまった。



「ゆーなー!早く寝なさいよ。」

「んー。」

適当な返事をしながらあたしの隣の部屋にお姉ちゃんが入っていく音が聞こえた。



あたしも明日から学校が始まるわけだし、寝なきゃな…



トントン


あたしの部屋のドアが誰かからノックされた。

誰かって言ってもお姉ちゃんだとは思うんだけどね…



「はーい」

「ねぇ、莉奈って園城高校に行くんでしょ?」


部屋にいつもうるさいお姉ちゃんが少し静かなトーンで入ってきた。

園城(オンジョウ)高校というのはあたしが明日から通う高校。


少し倍率が高い高校だったけど、すごく家から近かったから栞と話して頑張って受験した。

あと、制服が可愛くて校舎が綺麗だっていうこともあったんだけどね…?



「うん、そうだけど…どうしたの?」

「あー、あたしも園城に行けば良かった…」



お姉ちゃんは園城高校ではなく、園城高校とは逆の方向にある鳳蘭(ホウラン)高校に通っている。


鳳蘭高校もすごい制服可愛いし、ちょっと高校は遠いけど校舎だってすごく綺麗。



「だって、園城って……はぁ。
あ、いきなりごめんね?おやすみ…」