早く、戻ってきてよ…


花火…始まっちゃうよ?


那雲…




『はぁ…はぁ…はぁ…いた…』




私の腕を掴むと顔を上げた。





「す…い…くん」


『さっき、那雲くんに会ったんだ。』




えっ…?


なんで…なんで…


もしかして那雲、彗くんを人並みから見つけて。


私のために嘘付いたんだ…


バカみたいにはしゃぐ私を見透かして。


ごめんね…

那雲





『あっ、花火始まるよ?』


「はい!」


『敬語禁止』


「うっ…うん。」





困る私の顔を見てちらっと歯を見せて笑う彗くん。


この笑顔を独り占めしたい…


彗くんの右腕をグッと引いてくっついてみた。


見上げると、彗くんは驚いた顔をしてにっこり笑ってくれた。


そして二人空を見上げた瞬間、大きな音を立てて夜空に広がる花火…


何発も何発も…


そのどれもが綺麗で…


那雲も何処かで見ているのかな。


気づけば涙が静かに流れた…




ダメ…泣いちゃ。


那雲が作ってくれた時間だもん。


笑わないと…