「ここで働いてんだ。」

自分ではこの言葉を送り出すのにさほど時間をかけたつもりはなかったが、二人には(僕以外の二人だが)困惑した空気が流れていた。

かなりの間があいたようだ。

僕の冷静は、ただの勘違いだったのかな。



…君からすれば全く解せない状況だろうな。

なにしろ僕は『ワタナベ』じゃない。

このボブの店員からすれば…あの日から五年間、僕は間違いなく『ワタナベ』なのだが、それを君は知らない。知るはずもない。