クーラーが効きすぎているのか、温度にさほど敏感ではないはずの僕は、思わず二の腕をさすっていた。

僅かにあいた口から音を立てて息を吸い込んだ。

でも、冷え過ぎたそいつらは、てんで体の奥まで入ってこない。

 目が泳ぐってこういうことなんだな。

不意に現れたこの店員が、僕のやっとこさ落ち着きを取り戻しつつあった心をかき乱したせいか、さっきまで僕の目に入ってこなかった店のモノが次々にその輪郭をはっきりと示しだしていた。