体育座りの膝の上にあごを乗せて、笑みの形を作った口元から、「今回はね、」と、さっきよりもほんのすこし明るい声が滑り出る。
「学校始まるのが嫌で、どよーんってしてて、気がついたらいつのまにか、『あたしみたいな凡庸な人間はいてもいなくても変わらないんじゃないか』なんて悩んでたの」
「あー、たまにある」
「あるよね! あたしなんていてもいなくても変わんない。料理の付け合わせのレタスと一緒。って、そんなことでグルグル悩んだりね」
「なに、その意味わかんねぇ例え。それにレタスなめんなよ。あいつは彩りを添えてるって点で役に立ってんだよ」
「あ、そうか。これは失礼」
あたしたちは顔を見合わせて、同時に吹き出す。
互いに名前も知らないけれど、こうやって笑い合うことはできるんだ、と、妙なところに感動を覚えた。
「さてと、」
ひとしきり笑ったのち、あたしは言って、立ち上がった。