「…ッッ!!危なッッ」
「ぅゎッ!?!?」
彼は横断歩道の真ん中まで行くと
姿を消した。
黒い車が彼の後ろ スレスレを通った。
……ひかれた??
縁起でもない。
今日はなんて最悪な日なんだろ。
寝坊するし
春なのに寒いし
目の前で人死ぬし…。
最悪だ。
そう思ったとき、彼はいた。
車は何事もなかったかのように
そのまま 通り過ぎ
彼は青になった横断歩道の真ん中で
立ちすくんでた。
「よかった-。死んでない」
「おぉッ!!俺 生きてんじゃん」
彼は今目を覚ましたかのように
何度も瞬きをしながら
辺りを見回す。
私と目が合うと彼は笑って
「お騒がせしました」
なんて言って 頭を下げた。
そんな彼が可笑しくて
つい笑ってしまう。
「ぁ 点滅」
彼の指差す方を見てみると
さっき青になったはずの信号は
横断歩道に残った私たちを急かすように
点滅している。
彼と私は早足で横断歩道を渡った。