高校2年生 春。
空は雲1つない快晴。
私の大好きな季節。
温かい風に包まれた瞬間なんて
幸せでしかない。
…のはずなのに
手は悴んで マフラーに顔を埋める。
温かい風どころか
冷たい風に囲まれて
私は今、最高に機嫌が悪い。
今日は終業式なのに寝坊するし
目の前の横断歩道は中々青にならないし
荷物重いし、寒いし…。
何に対してもイライラしてしまう。
…駄目だな。
寝坊したのも私が悪いんだし
横断歩道なんて仕方ないもん。
「長いんだって」
独り信号に向かって呟いた。
「ぁ 黄色」
車道の信号が黄色になったとき
そう言ったのは同じ制服を着た男の人。
「渡ろうか」
彼は私にニカッって笑ってみせると
横断歩道を渡り始める。