私はお化粧をして美容室へ行き、パーマをかけ、思い切って足を踏み入れたランジェリー店で下着を買い、日々、清潔を保った。
その効果が現れたのか、土曜日、優輔に誘われ久しぶりに銀座へ出掛けた。
「京子、なんだか綺麗になったな」
「そうかしら?」
「他の男に取られそうで、心配だよ」
「えっ……」
私は優輔のその言葉で気づいたのだ。
他の男に取られたいと。
優輔とは大学で知り合い、十年という長い交際を経て結婚した。
そういえば、花沢瑠美からの手紙を読んだあの日は十年目の結婚記念日。二人とも覚えていなかった……。
今年、私と優輔は四十歳になる。
恋がしたい。
アラフォー女性の今しかできない恋。
私はもう手紙が来る事がないように、ストライプのシャツのポケットを白い糸で丁寧に縫いつけた。
赤い糸はあなたにあげる。
どうぞ彼を好きなようにしてください。
私は彼と夫婦という保証さえあれば白い糸でいいのです。
【浮気はポケットから*END】