「いいよ、目開けて」
裕貴の声にゆっくり目を開けると、そこにはまるで外国のような綺麗な町並みが広がっていた。
「わぁ…!!すごい綺麗…」
私がその情景に見入っていると、裕貴は私の手を引いてスタスタと歩き始めた。
周りは商店街のようで、たくさんの人で賑わっている。
「ここには色んなものが売ってるんだ。
食べ物や雑貨、日用品も全部!
とりあえず、必要なものは買っていこ!
お金は心配しなくていいから」
「ちょっ、ちょっと待って!
私、帰る場所とか、そもそもここのこともよく分からないし…」
「そんなの、俺の家に来ればいいし、ここのことは後からちゃんと説明するから心配しなくていいよ。
ほら!早くしないと売り切れるぞ!」
裕貴は笑いながら先を行ってしまう。
状況がうまく飲み込めないまま、時が過ぎてゆく。
でも、久々に吸った外の空気は、消毒の匂いもなく、とても澄んでいるように感じた。