「これなんてどう?」
「もう読んだ」
「じゃあこれは?」
「この前借りたばかり」
「……もうさっきのでいいんじゃない?」
さえちゃんは少し飽きてきているようだった。私の本探しを手伝いながらもチラチラとカウンターの先輩を見ている。
私は意地でも先輩が読んだことのない本を借りようと思って探していた。だけど、どの本にも借りた紙には中島豊の名前がある。
「……あれ?」
「どうしたの、いちご?
そっち貸し出し禁止だから見ても……」
私は探すのに夢中で貸し出し禁止のコーナーまで来ていた。貸し出し禁止コーナーだから資料物の本が多い。だけど、一冊だけ妙に惹かれる本があった。
「タイトルが……ない」
私は気になってその本を手に取った。普通、帯にタイトルがなくても表紙には必ずタイトルがある。だけど、その本には緑の表紙にもタイトルが書かれていなかった。なんだか本というよりは日記のような雰囲気だ。
「それどんな話なの?」
「どんな話だろ」
私は中身が気になって本を開いた。目次には節のタイトルがあった。どうやら小説のようだ。ただ不思議なことにページ数は書かれていない。私は目次の次のページをめくった
「うっ……」
「えっ……」
その瞬間強い光が本から放たれた。トサッと本は床に落ちた。
開かれていたページには第1章「わがまま姫様の探し物」と書かれてあった。