「いちご!!帰ろーー!!」
今日も面白いこと何一つ起きずに授業は終わった。ついでに。当たり前だが、朝起きたら魔法は使えるようになっていなかった。
「図書室寄ってもいい??」
「もちろん!!!」
さえちゃんは図書室に行くのを待ってましたとか言わんばかりだった。
この子はクラスで一番仲のいい石井紗子ちゃん。さえちゃんは図書委員の先輩にひっそりと恋をしていた。ひっそりは自称で周りからはもろバレだ。さえちゃん先輩に会うために私が図書室に通うのは万々歳。一人で図書室に行くのは柄じゃないから出来ないらしい。
「今日はこの本にするの?」
「SF読むの珍しいですか?」
「この本あまり面白くないんだよね」
受付で本の貸し出しの手続きをしてくれているこの人が、さえちゃんの好きな人・中島豊。通称・王子。勉強ができるイケメンだ。仕事中はいつもメガネをかけている。それがさえちゃんにはツボらしい。周りの女子もツボらしい。
一年生の頃から図書室に通っている私はいつの間にか顔見知りから、世間話をするステージにまで達していた。
「じゃあ別の本にしてきます!」
私は借りようとしていた本を奪い取った。
周りからは優しいと評判の中島先輩。中身は少し冷たい。ある程度親しくなって気づいた。この前さえちゃんにそのことを話してみたけど、ギャップがいいで終わった。恋は盲目だった。