屈辱的だった。

それが原因で副部長だったあたしは部活をやめた。


だけど今となっては正直少し後悔している部分もある。
どんな状況でも全国に出られるというのならそれほど嬉しいことはない。
別にハンデをもらっているわけではなかったしむしろレベルが上がっていたはずだ。

今よりもっと速い人と競えたかもしれない。


それに最後の大会、周りからは優勝するのではないかとまで言われていたのに、その時のあたしではまだ全国レベルの男子には到底適わない。

だから、そこまで鬼畜かと思ったけど


本当は先生はあたしにその結果で満足してほしくなかったのかもしれない。


そう思うと何とも複雑な気分だった。



「…実話?ジョークじゃなくて?」


「信じがたいけど実話です。
世の中恐ろしいこともあるものですね」



真尋がそんな反応をするのもわかる。
非現実的すぎるし、本の話でも女子が男装するのは分かるが、大会までも男子に紛れ込むなんて無理だろうに…



「そっかあ…」



うーんと真尋は考え込んでいた。



「まあ、今となってはどうでもいい話だよ。
あの時は気にしすぎだった気がする」



これはあたしの本心だ。

でもどうしてそう思うようになったのだろう?
入学当初まではかなり気にしていたような気がするが。



「今そんなに気にしていないなら入るべきじゃないかな?
だって走ってる時の樹さん、すごく楽しそうでキラキラしてるよ」


「そう言われると、照れる…」



今まで足が速いのを褒められたことはあったけど
走っている姿を褒められるのは初めてだ。

だけど、あたしの中には別にもう一つの理由…
今となっては一番大きな理由があった。



「いや、まあ、そうなんだけど…」


「どうしたの?」