目を開けると、そこは本能寺だった。
それもどうやら、信長がいる部屋の隣の部屋らしい。
ふすまを隔てた隣からは信長と蘭丸らしき声がした。
何を話しているかは分からなかった。
俺は立ち上がって、そのふすまをゆっくり開けた。
「蘭丸と信長か? 」
俺の突然の登場に2人は目を丸くしていたが、すぐに穏やかな表情になった。
「なんだ、翔真か。急にどうした? 」
信長が細い目をなお細くさせて聞いてきた。
「いや、これを2人に渡したくて」
「これはなんだ? 」
「俺と蒼空から。俺らしばらく来れないから、万が一何かあったら死ぬ前に読んでくれ」
「そうか。分かった。だがこれを読むことはないだろうな」
「そっか。まぁ、万が一ってことで。そろそろ帰るわ」
「ああ。また来い」
「………もちろん」
本当はもう来れない。
だけどそんなことはもちろん言えなかった。
俺は黙って、本能寺を後にした。
【翔真side end】