【翔真side】
「行ってらっしゃい」
そう言った蒼空の顔は笑ってて、でもどこか寂しそうで。
それでもなお、美しかった。
月日を経て、どんどん綺麗になっていく蒼空に、俺の目は簡単に奪われた。
だけど、あいつには彼氏がいて。
俺がもたもたしてる間に、蒼空は手の届かない人になってしまった。
それが今。
あいつ、誠司と別れたらしい。
詳しい話はしてくれなかったけど、俺にとってはチャンスだ。
もう2度と、ためらったりしない。
この気持ちに嘘はつかない。
………って、今そうじゃねぇだろ。
そんなこと考えてんと、術失敗すんぞ!
自分で自分を叱咤して、信長から貰った瑠璃色の杯を取り出した。
そして手早く呪文を唱える。
間も無く、どこかに連れて行かれるような感覚がした。