「できたっ! そっちは? 」
「あとは術をかけるだけだ」
魂縛りの術は少し高度な術だから、呪文も難しいし、少し時間もかかる。
私より優秀なソウでさえ、大変な術なんだ。
「じゃあいくぞ」
「うん。頑張れ」
「心配すんな」
ソウはニヤッと笑うと、目を閉じた。
「臨兵闘者 皆陣列在前。森羅万象の神よ 我に力を与えたまえ。この石の力 最大限に引き出したるは我なり。故に我の願い聞き届けたり。 この石に流れる魂 森蘭丸公と織田信長公の魂よ 死してなお この石に留まり その姿我らにのみぞ 見せたまえ 」
九字をきって、スラスラと呪文を唱えるソウ。
私はソウの霊力が無くならないよう、隣で送り続けた。
「……終わったぞ」
「よ…かった」
「じゃあ手紙、届けてくる」
「待って、私も行く! 」
立ち上がる私を、ソウは鋭く睨みつけた。
「お前は待ってろ」
「でも………」
「でもじゃないっ! 」
珍しくソウが怒鳴った。
その気迫に釣られて、私も黙らざるをえなかった。
「今向こうは戦場なんだ。そんな危険なところに蒼空は行かせられない」
ソウが優しく、諭すように言った。
「心配すんな。すぐ帰ってくる」
私は曖昧に頷いた。
本当はついていきたい。
でもソウが怒鳴ったとき、それが覆せないなんてずっと知ってる。
だから私は言うんだ。
「行ってらっしゃい」
って。
とびっきりの笑顔で。