No.1ガール〜桜の姫〜①



翼「ふーん…そいつって男か?」



理「え?違うけど。どうして?」



翼「…いや、ならいい。」



ならいいって何がいいの?


男の人だったら何かあったのかな?



よく分からなかったけど、特に気にしないことにした。



考えてもどうせ分かんないだろうしねー。



陽「たっだいまー!!お、翼起きてたのか!ほれ、アイス買ってきたぞ!」



勢いよくドアが開いたかと思うと、アイスの入った袋を両手にぶら下げた陽希が帰ってきた。



理「おかえりー。随分と早かったね。」



まだ10分ちょっとしか経ってないんじゃない?



陽「だろ?下の奴にバイク借りたからな!」



あーなるほど。通りで早いわけだ。





陽「ほい!理央りん好きなの選んでいいぞ。」



机の上にはいろいろな種類のアイスが並んでいる。



どれにしよっかなー…。



うーん、いっぱいあり過ぎて迷う。



こう言う時って優柔不断だと困るよね。




理「えっとー…これにする!」



そして選んだのが、バニラの中にチョコクッキーが混ざっているカップアイス。



理「陽希ありがと!またバスケしようね!!」



陽「おう!次は負けねえからな!!よし、じゃあ他の奴らにも配ってくるな。」




そう言って、陽希は残りのアイスを持って下に降りて行った。





理「いただきまーす。」




ん〜美味しい!!




バニラとチョコクッキーの相性って最高だよね。




理「あれ?翼はいらなかったの?」



私は隣で雑誌を見始めた翼に言った。




翼「俺はいい。甘い物はあんまり好きじゃねえしな。」




あー、確かに翼とアイスって合わないかも。




ブラックコーヒー飲んでるイメージだよね。




でも逆にギャップ萌えって言うのもありかもしれない。



……ダメだ、思考が変態の方向にいってる。



よし、考えるのやめよう。



私は考えるのはやめて、黙々とアイスを食べ進めたのでした。




菜「よーし!!いざ、出陣!!」



人差し指を前に突き出して大声でそう叫ぶ菜々夏。




あのー、もの凄く注目浴びてますが…。



理「な、菜々夏、ちょっと落ち着こう?」



菜「何言ってんの!?だってさだってさ、理央と初めてのデートなんだよ!?楽しみすぎて昨日は寝れなかったんだから!!」



ハイテンションの菜々夏はもう止まることを知らない。



バスケをした日から2日。


今日は菜々夏と前に約束した通り近くのモールにショッピングに来ている。



菜「はぁ〜理央とお買い物なんて夢見たい!疾風たちを説得した甲斐があったね!!」



理「かなり心配してたけどね。」



それは昨日の夜の事ーーー。



疾「…ダメ。」


菜「えー、疾風お願い!」



静かにコーヒーを飲んでいる疾風の隣で、両手を顔の前で合わせて必死で頼み込んでいる菜々夏。



疾「二人だけで出かけるなんてダメに決まってるだろ?いつどこで狙われてるか分からないんだから。」



菜「でも〜…。」



ただいま菜々夏は私と二人だけで出かける事を交渉中。


もちろん疾風は「ダメ」の一点張り。


そりゃそうだ。



珀龍神の姫である私たちが二人だけで買い物なんて危険すぎる。



もしその時に攫われでもしたら、私たちはおろか、珀龍神全体の危機にもなるからだ。



理「菜々夏もう諦めよ?疾風たちも一緒になら買い物に行けるんだし。」



菜「それじゃダメなの!私は理央と二人っきりでゆっくり買い物したいの!!」




ゆっくり、ね……。



まあ確かに、皆が一緒に行ったら買い物どころじゃなくなる。



女の子たちによってね。



菜々夏が二人で行きたいと言うのも無理ないのかもしれない。



理「…はぁ、翼。今回だけは許してあげて?私もちゃんと注意するし、何かあればすぐに連絡するからさ。」



私はさっきから黙って目を瞑っている翼に言った。


ここは菜々夏を援護しますか。



翼「…分かった。」


疾「翼!?」



まさか翼が了承するとは思わなかったのか驚いている疾風。



いや、私も正直驚いてるけどさ。


だってまさか、本当にOKしてくれるとは思わなかったもん。



理「…いいの?」



翼「あぁ。ただし、行く時と帰る時は必ず送る。どこか別の場所に移動する時もだ。分かったな?」



疾「…はぁー、本当翼は理央ちゃんに弱いよな…。
分かったよ。でも、二人とも何かあったらすぐに連絡する事。いいね?」



菜「やったーー!!」



理「分かった。…翼、疾風ありがとね。」




私は二人にお礼を言った。




すると、疾風は「俺も翼もまだまだ甘いなー。」と苦笑いしていた。



菜「あ、そうだ理央!明日はその地味子ちゃんの変装しないで来てね?」



理「…え?」



今、何て言った?



陽「菜々夏、お前理央りんの変装の事知ってたのか?」



菜「うん、知ってたよ?」



さも当たり前かのような顔をする菜々夏。


確か菜々夏の前でこの変装取ったことはなかったよね?



理「いつから気づいてたの?」



菜「えっとー、初めて会った時からかな?だって違和感あったし。」




そんな前から。


何か初めて見破られたからちょっとショック…。




理「気付いてたなら何でなにも聞いてこなかったの?」



普通なら聞いてくるもんだと思うけど。



菜「だって、変装しててもしてなくても理央は
理央でしょ?だったら別に理由なんて関係ないじゃん。」




菜々夏…。



優「菜々夏は人を見る目だけはあるからなー。」



菜「ちょっと優聖?それって褒めてるのか貶してるのか分かんないんだけど!」




理「ふふっ、菜々夏大好き!」




私は菜々夏の言葉が嬉しくて思わず抱きついた。




菜「私も理央大好きーー!」




ギューっと抱きしめ合う私たち。




端から見れば変な光景だろう。





菜「てことだから、明日もし地味子で来たら眼鏡割るからね?」




そう言って、黒い笑みを浮かべる菜々夏。



あ、それはやっぱり決定なのね。




理「は、はい…分かりました。」