翼「ふーん…そいつって男か?」
理「え?違うけど。どうして?」
翼「…いや、ならいい。」
ならいいって何がいいの?
男の人だったら何かあったのかな?
よく分からなかったけど、特に気にしないことにした。
考えてもどうせ分かんないだろうしねー。
陽「たっだいまー!!お、翼起きてたのか!ほれ、アイス買ってきたぞ!」
勢いよくドアが開いたかと思うと、アイスの入った袋を両手にぶら下げた陽希が帰ってきた。
理「おかえりー。随分と早かったね。」
まだ10分ちょっとしか経ってないんじゃない?
陽「だろ?下の奴にバイク借りたからな!」
あーなるほど。通りで早いわけだ。
陽「ほい!理央りん好きなの選んでいいぞ。」
机の上にはいろいろな種類のアイスが並んでいる。
どれにしよっかなー…。
うーん、いっぱいあり過ぎて迷う。
こう言う時って優柔不断だと困るよね。
理「えっとー…これにする!」
そして選んだのが、バニラの中にチョコクッキーが混ざっているカップアイス。
理「陽希ありがと!またバスケしようね!!」
陽「おう!次は負けねえからな!!よし、じゃあ他の奴らにも配ってくるな。」
そう言って、陽希は残りのアイスを持って下に降りて行った。
理「いただきまーす。」
ん〜美味しい!!
バニラとチョコクッキーの相性って最高だよね。
理「あれ?翼はいらなかったの?」
私は隣で雑誌を見始めた翼に言った。
翼「俺はいい。甘い物はあんまり好きじゃねえしな。」
あー、確かに翼とアイスって合わないかも。
ブラックコーヒー飲んでるイメージだよね。
でも逆にギャップ萌えって言うのもありかもしれない。
……ダメだ、思考が変態の方向にいってる。
よし、考えるのやめよう。
私は考えるのはやめて、黙々とアイスを食べ進めたのでした。
菜「よーし!!いざ、出陣!!」
人差し指を前に突き出して大声でそう叫ぶ菜々夏。
あのー、もの凄く注目浴びてますが…。
理「な、菜々夏、ちょっと落ち着こう?」
菜「何言ってんの!?だってさだってさ、理央と初めてのデートなんだよ!?楽しみすぎて昨日は寝れなかったんだから!!」
ハイテンションの菜々夏はもう止まることを知らない。
バスケをした日から2日。
今日は菜々夏と前に約束した通り近くのモールにショッピングに来ている。
菜「はぁ〜理央とお買い物なんて夢見たい!疾風たちを説得した甲斐があったね!!」
理「かなり心配してたけどね。」
それは昨日の夜の事ーーー。
疾「…ダメ。」
菜「えー、疾風お願い!」
静かにコーヒーを飲んでいる疾風の隣で、両手を顔の前で合わせて必死で頼み込んでいる菜々夏。
疾「二人だけで出かけるなんてダメに決まってるだろ?いつどこで狙われてるか分からないんだから。」
菜「でも〜…。」
ただいま菜々夏は私と二人だけで出かける事を交渉中。
もちろん疾風は「ダメ」の一点張り。
そりゃそうだ。
珀龍神の姫である私たちが二人だけで買い物なんて危険すぎる。
もしその時に攫われでもしたら、私たちはおろか、珀龍神全体の危機にもなるからだ。
理「菜々夏もう諦めよ?疾風たちも一緒になら買い物に行けるんだし。」
菜「それじゃダメなの!私は理央と二人っきりでゆっくり買い物したいの!!」
ゆっくり、ね……。
まあ確かに、皆が一緒に行ったら買い物どころじゃなくなる。
女の子たちによってね。
菜々夏が二人で行きたいと言うのも無理ないのかもしれない。
理「…はぁ、翼。今回だけは許してあげて?私もちゃんと注意するし、何かあればすぐに連絡するからさ。」
私はさっきから黙って目を瞑っている翼に言った。
ここは菜々夏を援護しますか。
翼「…分かった。」
疾「翼!?」
まさか翼が了承するとは思わなかったのか驚いている疾風。
いや、私も正直驚いてるけどさ。
だってまさか、本当にOKしてくれるとは思わなかったもん。
理「…いいの?」
翼「あぁ。ただし、行く時と帰る時は必ず送る。どこか別の場所に移動する時もだ。分かったな?」
疾「…はぁー、本当翼は理央ちゃんに弱いよな…。
分かったよ。でも、二人とも何かあったらすぐに連絡する事。いいね?」
菜「やったーー!!」
理「分かった。…翼、疾風ありがとね。」
私は二人にお礼を言った。
すると、疾風は「俺も翼もまだまだ甘いなー。」と苦笑いしていた。
菜「あ、そうだ理央!明日はその地味子ちゃんの変装しないで来てね?」
理「…え?」
今、何て言った?
陽「菜々夏、お前理央りんの変装の事知ってたのか?」
菜「うん、知ってたよ?」
さも当たり前かのような顔をする菜々夏。
確か菜々夏の前でこの変装取ったことはなかったよね?
理「いつから気づいてたの?」
菜「えっとー、初めて会った時からかな?だって違和感あったし。」
そんな前から。
何か初めて見破られたからちょっとショック…。
理「気付いてたなら何でなにも聞いてこなかったの?」
普通なら聞いてくるもんだと思うけど。
菜「だって、変装しててもしてなくても理央は
理央でしょ?だったら別に理由なんて関係ないじゃん。」
菜々夏…。
優「菜々夏は人を見る目だけはあるからなー。」
菜「ちょっと優聖?それって褒めてるのか貶してるのか分かんないんだけど!」
理「ふふっ、菜々夏大好き!」
私は菜々夏の言葉が嬉しくて思わず抱きついた。
菜「私も理央大好きーー!」
ギューっと抱きしめ合う私たち。
端から見れば変な光景だろう。
菜「てことだから、明日もし地味子で来たら眼鏡割るからね?」
そう言って、黒い笑みを浮かべる菜々夏。
あ、それはやっぱり決定なのね。
理「は、はい…分かりました。」