No.1ガール〜桜の姫〜①




どうしたんだろ?



気になるけど、翼が何も言わないなら聞かない方がいいのかもしれない。




理「よし、じゃあ早く倉庫行こう!」


翼「あぁ。」



私たちは車に乗って倉庫に向かった。






理「ただいまー!」


菜「あ!理央おかえり!!」


陽「理央りんやっと来たー。理央りんがいなかったから今日学校めちゃくちゃ暇だったんだぞ!」




やっぱりここは賑やかだなー。


倉庫に着いていつもの部屋に行くと、陽希、菜々夏、疾風の三人がいた。



理「あれ、優聖は?」


陽「女のとこー。」



あぁ、なるほどね。


疾「理央ちゃんおかえり。何か飲む?」


理「うん!お願いしてもいい?」


疾「ちょっと待ってね。」



そう言うと疾風はキッチンの方へ入っていった。






少しすると、疾風がココアを入れて持ってきてくれた。



理「ありがと疾風」


疾「どういたしまして。実家は楽しかった?」


理「うん、まあ楽しかったかな?」



お父さんの相手が面倒くさかったけどね。



疾風が入れてくれたココアを一口飲むと、口いっぱいにちょうどいい甘みが広がった。




陽「なあ、そう言えば翼は?」



え?さっき一緒に階段上ってきたはずだけど。




部屋を見渡すと確かに翼はいなかった。




疾「さっき総長部屋入ってったけど?」




やっぱり翼、何か様子変だよね…。



どうしたのかな?



いつも隣に座っている翼がいないこのソファーは少し寂しく感じた。







陽「あーー暇だーーー暇だよーーー。」



理「陽希うるっさい!」




ソファーに項垂れて、馬鹿の一つ覚えみたいに「暇だー。」を連呼している陽希を一喝する。




うるさいったらありゃしない。




陽「だってせっかくのゴールデンウイークだぜ?5連休だぜ??何もしないでいるなんてもったいねぇじゃんかよ!!」




そう言いいながら、私の肩をグラグラ揺らす陽希。




め、目が回る…。




理「わ、分かったから!!揺らすな!!」



陽「あ、悪い悪い……にしても暇だーー!!」



肩から手を離した陽希は今度は机に項垂れる。



はぁー…。




陽希が項垂れている理由。



それは今がゴールデンウイークにも関わらず、やる事がなく倉庫で暇をしているから。




他の皆はどこかって?


疾風と菜々夏はデート。


優聖は何だか忙しそうに倉庫を出て行った。


何でも、時間単位で色んな女の子と遊ぶらしい。


さすが珀龍きっての女好き…。


ある意味尊敬するよ。


翼はさっきまでここにいたんだけど「眠い。」と言いながら自分の部屋に行ってしまった。



つまり、今ここには私と陽希だけ。




陽「何かやる事ねえかなー?俺、暇すぎて死ぬかも…。」



理「もしそうなったら私が丁重に供養しといてあげるから、心置きなくどーぞ。」



陽希に向かって手をすり合わせる。



陽「うわ、理央りんひでぇ!!……ん?そう言えば何で休日なのに地味子の格好してんだ?」



理「え?あぁこれ?」



私の今の格好は、学校と同じお下げにメガネの地味子姿。



唯一違うのは、制服じゃなくてショートパンツにTシャツというラフな服装だけ。




理「珀龍神のもう一人の姫は地味子でもう知れ渡ってるでしょ?だから、なるべくここへ来るときは同じ格好で来るようにしてるの。」




もし地味子姿じゃない私が倉庫に入って行くところを見られたら、「あの女は誰だ!?」って騒ぎになりかねない。



それに、この姿のままの方が私も何かと都合がいい事が多いからね。




て言うか陽希、それ今さら聞く?





陽「ふーん…にしても暇だなー。」



まだ言うか。



理「ゲームしてればいいじゃん。」



陽「もう飽きた。」



理「バイクでどっか行ったら?」



陽「バイク修理中で今ここにない。」



理「寝たら?」



陽「ゴールデンウイークだぞ!?寝るなんてもったいない!!寝る奴の気が知れねえよ!」




いや、さっき寝に行った人がいるからね?



ここの総長さんがさ…。


きっと今爆睡中でしょうよ。





はぁー、もう陽希は放っておこう。




私は家から持ってきた本があるから、それを読んでれば全然暇じゃない。




この本かなり面白いんだよねー。




陽「ん〜〜あぁぁぁ!!!」



突然大声を出した陽希。


お、ついに暇すぎて頭がおかしくなったか?



変なものを見るような目で陽希を見ていると、逆にキラキラした目で見返された。



え、何?



陽「理央りんバスケしようぜ!バスケ!!」



バスケ?




理「どこで?」




陽「どこって下でに決まってんだろ!よし、そうと決まれば行くぞー!!」



理「え、ちょ、ちょっと!」



私は陽希に手を引っ張られて半ば無理やり幹部部屋から連れ出された。







陽「おーいお前ら!バスケしようぜ!!」



幹部部屋を出て下に降りた私たちは、下っ端君たちの輪に近づいた。



「あ、陽希さんに理央ちゃん、どもっす」


「こんちわーす!」




下っ端君たちとはいろいろ話をしたりしてかなり仲良くなった。



はじめは皆、敬語で私の事を“理央さん”と呼んでいた。



だけど、私はそんな偉いわけでもないし、ましてや守ってもらう立場だから、敬語はなしで“さん”付けもやめてもらった。



最初こそは皆戸惑っていたけど、今ではそれが普通になった。