得体の知れない胸の高鳴りに困惑していると優聖と陽希が戻ってきた。
優「俺はやっぱボンッキュッボンッの女の子がいいなー。」
陽「それはそうだけどよ、俺はボンよりもポンくらいの方がいいぞ!」
優「あー、それも一理ある。」
アンタ等は一体何の話をしてんだよ!
入ってきて早々、そんな会話が飛び込んできて呆れる私。
優「理央はボンとポンどっちが好みー?」
女の私にそれを聞くな!!
翼「で、そっちは片付いたのか?」
優「ん?あぁ、バッチリ。」
そうだ、優聖と陽希にもちゃんと言わなきゃ。
理「優聖、陽希ありがとね。守ってくれて。」
優「いいって事よ。姫を守るのが俺等の使命だしなー。」
陽「そうだぞ理央りん!遠慮なんかするなよ!」
本当、いい仲間に恵まれたよ……。
私は二人の言葉に「うん!」と笑顔で頷いた。
優「ま、とりあえず、あんだけ言っときゃ誰も理央に手を出す奴はいねえだろ。」
陽「いや、これでもちょっかいかけてくる奴がいたら、そいつはもう勇者だろ。俺そいつのこと尊敬するわ。」
翼「ただの馬鹿だろ。」
確かに珀龍神を敵に回したい人はいないだろうからね…。
それこそ自殺行為だよ。
そして次の日から、優聖が言った通り私に対する罵声や非難の声、いじめなんかに合うことは一切なかった。
さすがに珀龍神を敵に回すようなお馬鹿な勇者はいないよね。
ある日の休日。
私たちは倉庫でいつものように過ごしていた。
菜「ねえ理央、ゴールデンウィークに一緒に買い物行かない?」
理「買い物?」
ソファーで本を読んでいると、菜々夏がそんなことを言った。
菜「そう!だって後少しでゴールデンウィークじゃん!」
あーそう言えばもうすぐだっけ?
気がつくと満開だった桜も葉桜になっている時期だった。
買い物かー…。
そう言えばしばらく行ってなかったかも。
理「いいよ、行こっか!」
菜「やったー!!じゃあ楽しみにしてるね!」
友だちと買い物なんて久しぶりだなー。
何か楽しみかも。
私はルンルン気分で再び本に目を戻した。
ブーッブーッ
陽「ん?誰か電話鳴ってないか?」
理「あ、私だ。」
鳴っていたのは私のスマホで、相手は珍しい人物からだった。
嫌な予感がする……。
ピッ
理「はーい。」
仁『あ、理央か?』
電話の相手は仁だった。
理「私のスマホなんだから私じゃなかったら怖くない?」
仁『ははっ、それもそうだな。』
理「で、何か用?私的に嫌な予感がするんだけど?」
仁『あーまぁその予感は的中かもな。俺の用は伝言。明日家に帰って来いってさ。」
……嫌な予感的中。
こう言う時の嫌な予感って物凄く当たるんだよね…不思議なくらいに。
理「あのー、それって行かないと言う選択肢はないよね?」
仁『帰った方がお前の身のためだな。美咲さんちょっと怒ってたし。』
ですよねー……。
あ、美咲って言うのは私のお母さんのこと。
お母さん怒ったらすんごい怖いんだよ。
ここは大人しく明日帰ろう。
これ以上お母さんの逆鱗には触れたくない。
理「分かった。あ、でも明日学校は?」
仁『あぁ、それならもう永遠に話しは通ってるってよ。』
…最初から私に拒否権はなかったってことね。
さすがお母さん。
理「そう。じゃあ明日どうすればいい?」
仁『明日の朝9時頃に俺が迎えに行く。』
理「了解。じゃあまた明日ね。」
電話を切った私ははぁーと溜め息をついた。
……明日が憂鬱だ。
翼「どうした?」
隣に座っていた翼が顔を覗き込んで聞いてきた。
理「…実はさ、明日実家に帰らなくちゃいけないんだよね。だから明日は私学校休むね。」
陽「えー!理央りん明日学校来ねえのかよ!?」
私もできる事なら行きたくないよ。
別に家に帰ること自体は嫌じゃない。
ただ、“あの人”に会うのがねーー……。
こう何て言うか、疲れるのよ…。
疾「明日は誰かが迎えに来てくれるの?」
理「うん。マンションまで来てくれるって。」
疾「そっか。なら安心だね。」
菜「え、じゃあ理央明日はここへも来ないの?」
まるで捨てられた子犬のような目で見てくる菜々夏。
そんな目で見られたら行かないものも行きたくなるじゃん!
理「夕方には戻ってくるから、倉庫へは来るよ。」
最初からそのつもりだったしね。
菜「本当!?やったー!」
翼「ゆっくりしてこいよ。」
理「…うん、ありがと。」
ゆっくりできるといいんだけど……。
そして次の日。
いつもよりゆっくり準備した私は仁からの連絡を待っていた。
もうそろそろかなー?
ブーッブーッ
そう思っていたら電話が鳴った。
理「もしもーし。」
仁『今着いたぞー。』
理「りょーかい。今から降りてくね。」
私は財布と携帯を持って玄関を出た。