重症だな、俺。
思った以上に理央に惹かれている自分に正直驚く。
女なんて所詮は地位と顔目当てで寄ってくる奴らばかり。
だったら別に女なんていらねえ。
このソファーの隣はずっと空けておくつもりだった。
だが、理央に出会ってその考えは吹っ飛んだ。
“こいつが欲しい”
闇に染まりきった瞳をした理央を救ってやりたい、守りたい。
素直にそう思った。
まあ簡単に言えば“一目惚れ”とか言うやつだ。
まさか俺が女に惚れるなんてな。
疾「でもさ、翼も頑張らないと。理央ちゃんってそう言うの鈍そうだし。」
それは俺も同感。
多分あの様子じゃ自分の容姿の事も全く気付いてねえだろうな。
疾「あ、だからって独占欲丸出しだと逆に嫌われるからね?」
翼「…ほっとけ。独占欲丸出しはどっちだよ。」
こう見えて疾風はかなり独占欲が強い。
菜々夏をナンパした奴がいるもんなら、そのナンパした奴はしばらく街に顔は出せなくなるほどだ。
疾「別に独占欲なんて出してないけど?ただ溺愛してるだけ、悪い?」
そんな惚気を爽やかに言ってのける疾風をある意味尊敬する。
疾「とにかく、嫌われない程度にほどほどにな。じゃないと逃げられても知らないから。」
それだけ言うと疾風は部屋を出て行った。
……逃げられる?
翼「……逃がさねえよ、絶対な。」
†翼side end†
ピロリン♪
理「…ん、うーん。」
メールが来た音で目が覚めた。
朝から一体誰?
若干寝ぼけながらも、画面を操作する。
えっと……つ、ばさ?
翼、翼……
理「え!?翼??」
思ってもみなかった人物からのメールにかなり驚く。
昨日連絡先なんて交換してないよね?
何で翼からメールがきてるの?
不思議に思いながらも、とりあえずメールを開いた。
えーと、8時に迎えに行くからそこを動くな、か…。
うん、いかにも翼らしいメール。
必要最低限しか書いてないね。
ふと時計に目をやった。
………え、7時30分ーーー???
やばい!8時に迎えに来るんだよね?
急がないと遅れる!!
私はベッドから飛び降りてリビングに走った。
ギ、ギリギリ間に合った……。
華の女子高生が30分で用意できていいものかとも思うけどね。
ブーッブーッブーッ
電話?
画面には【優聖】の文字。
あ、さっき確認したんだけど、アドレスはもちろん電話番号までしっかりと皆の分が登録されていた。
本当いつの間にやったのか。
ピッ
理「もしもし。」
優『あ、理央か?今下に着いたから降りてきてー。』
理「分かった。すぐ行くね。」
さて、行きますか。
私は電話を切るとかばんを掴んで家を出た。
マンションを出ると、昨日乗ったあの黒い高級車が止まっていた。
…すっごい目立ってるよ。
菜「理央ー!おっはよー!!」
車の窓が開くと菜々夏が顔を出した。
私は車に近づくと、菜々夏に「おはよ。」と返して車に乗り込んだ。
疾「理央ちゃんおはよ。」
優「おはよーさん。」
陽「スーピー…スーピー…」
翼「……はよ。」
車に乗ると、陽希はまだ大口を開けて寝ていた。
翼も挨拶こそはしたけど、すぐに下を向いて目を瞑ってしまった。
理「2人とも朝弱いの?」
疾「そうなんだ。朝はいつもこんな感じ。」
へぇー、私も朝は弱い方だけどね。
あ、そうだ。
理「ねえ、いつの間に皆の電話番号を登録したの?」
優「ん~?あぁそれね。昨日皆で話し込んでた時ちょいちょいっと。」
ちょいちょいって……。
悪いとは少しも思わなかったの?
でもまあいいか。
後から聞く手間が省けたし。
「疾風さん、菜々夏さん、東雲高校に着きました。」
起きている3人と話していると、運転手さんが疾風と菜々夏の通う東雲高校に着いた事を知らせてくれた。
東雲高校の正門には、一ノ瀬学園同様にたくさんの女の子でいっぱいだった。
ま、当然だよね。
菜「じゃあ理央、また倉庫でね!」
理「うん、じゃあね!」
手を振って見送ると、菜々夏と疾風は黄色い歓声に包まれながら車を降りて行った。