差し出されたタオルなど目に入らなかった。


汽車も一時間に一本というこんな田舎で、知り合いに会うのも必然だったというのに、私は目に見えて動揺していた。



誰にも見られたくなかったのに。



心臓の音がどくどくと脳に響く。

どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。




いつまでも黙ったまま目を見開いている私の頭に、そのタオルがポンと乗った。


「それ、今日おろしたばっかだから。…汚くないよ」



使ったかどうかを気にしていると思われたのか。

そうじゃない、と伝えたかったが何を言えばいいのか分からなかった。

慌ててタオルを手に取りやっとのことで「ごめん」とか細い声で言う。