真夏の車内は冷房で冷え切っていた。


……寒い。


腕を抱え窓を振り返る。

闇の中ぽつぽつと灯る家の明かりが、後ろへ後ろへと揺れながら流れて行く。

喉の奥が苦しくなって、家の明かりがじわりと滲んだ。



「……ごめんなさい」



無意識に唇からこぼれ落ちたのは、どうしようもなく無責任な呟きだった。



多分、私は、きっと後悔する。

だけど、でも、ごめんなさい。

もうこれ以上、どうすればいいのか分からなかった。


もう引き返せない所まで来ていた。

だけどそれを選んだのは私だ。

私はどこまで、堕ちて行くんだろう。





幾つ目か分からない滴が頬を伝った時、ポン、と肩に手が置かれた。

反射で振り返る。

そこに見知った顔を認めた時、一瞬、心臓が止まった。




「…これ、使えば?」