「あの…」


彼から目を反らす。

言うべきか迷う私を、急かさず御波くんはじっと見つめている。

もう一度顔を上げると、彼と目が合った。



「…私の事、誰にも言わないでください」




御波くんは一瞬ぽかんとして数回瞬きをすると、

「言ってないよ」

と私の目を見たまま静かに言った。




「言ってない」



と、もう一度私の目を見据えたまま言う。

そこに嘘も何も含まれていないように、感じられた。


尤も、人の嘘なんて見抜けないものだけど。



「…ごめんなさい。ありがとう」



そう言うと、御波くんは頷き微笑み、
「俺が居たら寝れない?」
と訊く。


私は首を横に振る。




確かにまだ眠りたかった。

早くここを出て行かなくちゃ。その思いもあるにはあったが、あと少しだけ、と言い訳をして、もう一度眠らせてもらうことにした。




ベッドに再び身体を横たえると、睡魔はすぐに私を深い眠りへと誘った。