***
「はぁ…っ、はぁ…っ、…っん」
喉が痛い。
息が持たない。
苦しい。
バケツをひっくり返したような雨の中、彼女は走っていた。
後ろを、何度も何度も、
振り返りながら。
「きゃっ!」
脚がもつれて転ぶ。
胸の前に大きな荷物を抱えていたために、濡れたアスファルトに強かに身体をぶつけてしまった。
―――カンカンカンカンカン…
遠くで汽車の音が聞こえる。
左半身がジンジンと痛む。
お願い、間に合って。
歯を食いしばる。
彼女は再び走りだす。
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