「おーおー、見せつけてくれちゃって」



背後から、低い声が聞こえた。


バッと振り返ると、川瀬翠斗があぐらをかいて座り、こちらを眺めていた。



「お前……まだやる気なの?」



立ち上がって、朱架を庇う。


ていうか、いつから見ていたんだ。


悪趣味すぎる。



「もうやんねーよ、下手したら死んじまう」



ヒラヒラと手を振った川瀬翠斗は、のそのそと立ち上がって僕に近寄ってきた。


そして、僕の顔をじっと見つめる。



「…よく見ると、目は咲誇似なんだな。あいつと同じ、真っ直ぐで澄んだ目……」



切なげに笑った川瀬翠斗はポケットに手を突っ込んだ。



「アイツのこと……マジで好きだったんだ、俺。あのとき、本当は…手放したくなかった。でも掟で、追い出すしかなくて……」



そんなこと言われても、僕には分からない。


でも、この人が何かと葛藤してきたということは見て取れた。