唇に感じる、温かくて柔らかい感触。
父さんがしていたように、朱架の頭を手で支える。
少しの間そうしたあと、ゆっくりと唇を離した。
ぽかんとして固まっている朱架。
その頬は、だんだんと赤く染まっていく。
……?
母さんと、反応が違う。
僕……何か間違えたかな。
「あす……」
「っきゃあああっ!!!」
───バチンッ!!
鼓膜が破れるかというほどの悲鳴の後、頬に鋭く痛みが走った。
不意をつかれ、どしゃりと座り込む。
今度は、僕が唖然とする番だった。
真っ赤な顔でゼィゼィと息をしている彼女を無言で見上げてしまう。
「葵くんの……○※□@#¥◆△ーー!!」
何やら意味不明な事を叫んだ朱架は、顔を覆ってしゃがみこんでしまった。