「アイツら、お前に全く喧嘩させなかったみてぇだな。持ち前のセンスだけで俺の攻撃をよけるなんて……」
ストンと僕の前にかがみ込む川瀬翠斗。
襟元を掴まれ、頭を持ち上げさせられた。
「お前はダイヤの原石だな。殺すのは勿体ねぇ」
「離、せ……」
「俺に腹殴られて、まだ口がきけんのか。すげぇ……」
心底感心したように言った川瀬翠斗は、首を掴んで僕の体を持ち上げた。
腕力が、強過ぎる。
首が絞まって、呼吸ができなくなる。
「ぐ……っ!」
「殺すのは惜しいが、この際仕方ねぇよな。悪いけど死んでもらう」
ギリギリと絞まる喉。
どくん、どくん、と、自分の鼓動だけが頭に響く。
意識が朦朧とし始める。
僕は、このまま死ぬのかな……?
朱架に抱いた、この妙な気持ちを誰にも伝えられないまま?
父さんと母さんに、感謝を伝えられないまま?
この男の復讐のためだけに……死ぬ?
…………そんなの、絶対に嫌だ。