「待て、琉矢(リュウヤ)」
ドスの効いた、低い声が響いた。
その声で、茶髪男の手が止まる。
声の方を見た茶髪男…琉矢という男は、不機嫌そうに眉をひそめた。
「……何でですか?…川瀬さん」
川瀬さん……?
どこかで、聞いたような名前。
川瀬さんと呼ばれた人物に、目を向ける。
目に入ったのは……黒髪の、背の高い男だった。
歳は多分30代半ば。
かなり整った顔つきで、頬の傷跡が妖艶さを際立たせている。
「そいつを離してやれ」
「え…」
「早くしろ」
低い声で言われた琉矢は、大人しく僕を離した。
「……クソッ!」
悔しそうにソファーに座り込んだ琉矢。