僕は、コーヒーの缶に口をつけたままただ固まっていた。
校舎裏?
ヤンキー?
いじめ?
北……苑、朱架…………?
手からコーヒーが滑り落ち、白い地面に茶色く広がった。
それに構わず立ち上がる。
「南……くん?」
玲奈の声を無視し、貯水タンクのあるところから屋上のドアがあるところに飛び降りた。
女子たちが話していた「女の子」は……朱架かもしれない。
「南くん!待って!!」
頭上から声がして、一瞬だけ立ち止まる。
「だ、大丈夫だよ!その子、きっと朱架ちゃんじゃないよ!!」
玲奈の言葉に……僕は、少し振り返った。
「何で、朱架のこと知ってるわけ?」
「……」
玲奈の顔が少しひきつったのを、僕は見逃さなかった。
「何か知ってるのか?朱架のこと」
「……別に」
そっぽを向いた玲奈。
怪しい。
……けど、今はそんな暇はない。
「行くから」
それだけを言って、僕は駆け出した。