「葵くん!」



少しして、朱架が来た。


艶やかな髪が少し寝癖っている。



「ごめんね、寝坊しちゃって……」


「昼まで寝てたの?」


「えへへ…」



いたずらっぽく舌を出す朱架。


いつもと変わらない彼女に、ホッとする自分がいる。



「……来ないかと、思った」


「え?」



僕の言葉に朱架が目を丸くする。


分かりやすくしゅんとして、髪を耳にかけた。



「…………ごめん。怒ってる?」


「何で?怒ってないよ」


「そっか…。ごめんね」



僕、怒ったように言ったのかな。


ストンと座り込んだ朱架に目を向ける。


いつもより、元気がない。


僕のせいで落ち込ませてしまった。



何でだろう……心が、ムズムズする。


落ち着かない。


悲しいような、申し訳ないような気持ち。



「……ごめん」



気づけば、声に出していた。


朱架が驚いたように僕の方を向く。



「朱架が来ないかと思って、心配だったんだ…………と、思う」


「……『思う』って」



フフッと笑った朱架。


それだけで、なぜかとても落ち着く。