「…………どっちも」
「それなら、葵はその子に恋してるし、その子を愛してるんだね」
僕が?
朱架に、恋してる?
朱架を、愛してる?
「……分かんないや」
「それでもいいよ。でも、絶対に傷つけちゃだめ。…私は、蓮央を傷つけてしまったから…………」
目を伏せて、悲しそうな顔をする母さん。
昔のことを思い出しているのだろうか。
「でも、葵なら大丈夫だね。葵は優しいから」
「母さん……」
あまりにも切なそうな顔に、思わず声をかけると、母さんはいつもの笑顔に戻った。
「ご飯、できたよ。食べよっか!」
「……う、ん…………」
『葵は、その子に恋してるし、その子を愛してるんだね』
少し悲しそうだった母さんの言った言葉が、いつまでも頭に響いていた。